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水溶性切削油の浮上油回収は必須!適切な方法とリスクを解説

水溶性切削油の浮上油回収は、切削油の劣化防止、作業環境改善、製品品質向上、工具と機械の寿命延長、環境保護など、多くのメリットをもたらすため、非常に重要です。
しかし、その重要性を理解していない、あるいは適切な回収方法を知らないという理由で、浮上油回収を軽視している現場も少なくありません。

本記事では、水溶性切削油の浮上油回収の重要性、適切な回収方法、そして回収を怠ることで発生するリスクについて詳しく解説します。

水溶性切削油の浮上油回収の重要性とは?

水溶性切削油は、金属の切削加工時に発生する熱を効率的に冷却し、加工物の摩擦を減らすことで、工具の寿命を延ばし、加工品質を高める効果があります。
水と油を乳化させた液体であるため、冷却効果が高く、清掃も容易です。
しかし、切削作業中には、油分が空気中に分散したり、加工物や工具に付着したり、切削油タンクに溜まったりと、様々な形で浮上油が発生します。

浮上油は、切削油の劣化や悪臭の原因となるだけでなく、作業環境の悪化、製品品質の低下、工具と機械の寿命短縮、健康被害、環境への悪影響など、様々なリスクをもたらします。

1:切削油の劣化

浮上油は、酸化や分離を起こしやすく、切削油の品質を著しく劣化させます。
劣化すると、潤滑や冷却効果が低下し、工具や加工物への負担が増加します。

2:作業環境の悪化

浮上油は、タンク内で腐敗し、悪臭や有害物質を発生させ、作業環境を悪化させます。
また、浮上油が床や壁に付着すると、滑りやすくなり、作業員の安全を脅かす可能性もあります。

3:製品品質の低下

劣化や腐敗した切削油は、加工精度を低下させ、製品の品質に悪影響を及ぼします。
表面にバリや傷が発生しやすくなるだけでなく、強度や耐久性も低下する可能性があります。

4:工具と機械の寿命短縮

劣化した切削油は、工具や機械を適切に冷却・潤滑できません。
そのため、工具は過熱して摩耗しやすくなり、機械の寿命が短縮されます。
また、機械の故障や交換が必要になるリスクも高まります。

5:健康被害

腐敗した切削油は、作業員の健康に悪影響を及ぼします。
悪臭や有害物質を吸い込むことで、呼吸器系や皮膚にトラブルが発生する可能性があります。

6:環境への悪影響

劣化や腐敗した切削油は、適切に処理されないと、環境汚染の原因となります。
特に、水溶性切削油は、水に溶けやすく、河川や土壌を汚染する可能性が高いです。

これらのリスクを回避するためには、浮上油を定期的に回収することが不可欠です。

浮上油回収方法の選択肢

浮上油回収には、様々な方法があります。
それぞれの方法には特徴があり、作業環境や規模、予算に合わせて最適な方法を選択することが重要です。

1:油分離機(オイルセパレーター)

油分離機は、浮上油と切削油を自動的に分離する装置です。
切削油タンクに設置し、浮上油を回収することで、タンク内の切削油を清潔に保つ役割を果たします。

油分離機には、循環システムと連動するタイプもあります。
循環システムでは、タンク内の切削油を常にろ過するため、浮上油が発生してもすぐに取り除くことができます。

2:スキマー

スキマーは、タンクの表面に浮いた油を回収する装置です。
ベルト、円盤、チューブなどを用いて、油だけを効率よく取り除きます。

ベルトタイプのスキマーでは、ベルトが浮上油を引き上げ、スクレーパーで油を取り除きます。
円盤タイプやチューブタイプのスキマーも、似たような仕組みで油を回収します。

3:油吸着マットやパッド

油吸着マットやパッドは、水分を吸収せずに油だけを吸収する特殊な素材で作られています。
タンクに浮かべるだけで、浮上油を回収できます。

定期的に交換する必要がありますが、設置が簡単で、少量の浮上油が発生する場合には有効です。

4:遠心分離機

遠心分離機は、遠心力を利用して油と水を分離する装置で、精度の高い油回収が可能です。
大量の浮上油が発生する環境での使用に適しています。

切削油と浮上油を分離した後、切削油は再びタンクに戻り、浮上油だけが取り除かれるため、切削油の劣化を防ぐ効果が高いです。

5:その他の回収方法

浮上油の回収には、上記の装置以外にも、様々な方法があります。

手動による油吸い取り
油吸着剤の使用
濾過システムの利用

これらの方法を組み合わせることで、より効率的に浮上油を回収することができます。

浮上油回収を怠るとどうなるのか?

浮上油回収を怠ると、切削油の劣化、悪臭や腐敗の発生、工具と機械の寿命短縮、製品品質の低下、作業環境の悪化、健康被害、メンテナンスコストの増加、環境への悪影響など、様々なリスクが発生します。

1:切削油の劣化

浮上油が回収されずに放置されると、切削油の酸化や分離が進み、潤滑や冷却の効果が低下してしまいます。
劣化した切削油は粘性が変わり、冷却・潤滑機能が弱まるため、工具や加工物への負担が増えます。

2:悪臭や腐敗の発生

放置された浮上油は、タンク内のバクテリアやカビなどの微生物が繁殖しやすい環境を作ります。
これが原因で悪臭が発生し、作業環境が悪化します。
特に、水を含む水溶性切削油は腐敗しやすく、臭気対策が不十分だと、作業者にとって不快な環境となります。

3:工具と機械の寿命短縮

劣化した切削油は適切な冷却・潤滑機能を発揮できないため、工具が過熱して摩耗しやすくなり、寿命が短くなります。
また、機械部品にも負荷がかかり、故障や交換が必要になるリスクが増します。

4:製品品質の低下

切削油が劣化すると、加工精度が低下し、製品の品質にも悪影響を及ぼします。
特に、切削面にバリや摩擦による傷がつきやすくなり、仕上がりが悪くなる可能性が高まります。

5:作業環境の悪化と健康被害

腐敗した切削油から発生する臭気や、有害な微生物の増殖によるエアロゾル(空気中の微粒子)は、作業者の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
皮膚炎や呼吸器への影響が懸念されます。

6:メンテナンスコストの増加

放置による劣化が進むと、切削油の頻繁な交換や設備の洗浄が必要となり、メンテナンスにかかるコストが増大します。
また、切削油の劣化により、工具や機械の交換頻度も増え、総合的なコストが増加します。

まとめ

水溶性切削油の浮上油回収は、切削油の劣化を防ぎ、作業効率や製品品質を向上させるだけでなく、作業者の健康や環境保護の観点からも非常に重要です。
適切な回収方法を選択し、定期的な回収を行うことで、これらのメリットを享受することができます。

浮上油回収を怠ると、切削油の劣化、悪臭や腐敗の発生、工具と機械の寿命短縮、製品品質の低下、作業環境の悪化、健康被害、メンテナンスコストの増加、環境への悪影響など、様々なリスクが発生します。

本記事では、水溶性切削油の浮上油回収の重要性、適切な回収方法、そして回収を怠ることで発生するリスクについて詳しく解説しました。
製造現場の責任者や管理者は、これらの情報を参考に、適切な浮上油回収システムを導入し、作業環境の改善、製品品質の向上、に取り組んでください。