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スラッジ回収とは?種類や回収方法・現場で起きる問題と対策まで解説

製造現場において、切削加工や研削加工は、製品の精度や品質を左右する重要な工程です。
しかし、これらの加工工程では、微細な切粉である「スラッジ」が発生し、放置すると機械の故障や加工品質の低下、さらには作業環境の悪化といった深刻な問題を引き起こす可能性があります。
スラッジは、加工中に発生する金属の粉末や屑が、クーラント液や研磨液と混ざり合って生成されます。
その発生源は、切削工具や研磨材の摩耗、ワーク材の切削や研磨、加工液中の油分や添加剤などが挙げられます。
スラッジは、その粒径や形状、成分によって様々な種類に分類され、それぞれが異なる影響を及ぼします。

今回は、製造現場においてスラッジがどのように発生し、どのような問題を引き起こすのか、そしてその対策方法について解説します。
スラッジによるトラブルを解決し、より安全で効率的な製造現場を実現するための情報を提供することで、現場の責任者や作業者の皆様のお役に立てれば幸いです。

□スラッジとは?

切削加工や研削加工を行う際に発生する微細な切粉を「スラッジ」と呼びます。
スラッジは、加工液中に混入することで、様々な問題を引き起こす厄介な存在です。

1: スラッジの発生源と種類

スラッジは、切削加工や研削加工を行う際に発生する微細な切粉であり、その発生源は大きく分けて3つあります。

・切削工具や研磨材の摩耗:
切削工具や研磨材が摩耗することで、金属の粉末がスラッジとして発生します。
・ワーク材の切削や研磨:
ワーク材を切削したり研磨したりする際に、金属の屑がスラッジとして発生します。
・加工液中の油分や添加剤:
加工液中に含まれる油分や添加剤が、金属の粉末と反応してスラッジを生成します。

スラッジは、その粒径や形状、成分によって様々な種類に分類され、それぞれが異なる影響を及ぼします。

・金属粉末:
切削工具や研磨材の摩耗やワーク材の切削によって発生する、金属の粉末です。
・研磨粒子:
研磨材が摩耗して発生する、微細な研磨粒子です。
・油脂:
加工液中の油分が、金属の粉末と反応して生成される油脂です。
化学物質: 加工液中の添加剤が、金属の粉末と反応して生成される化学物質です。

2: スラッジ放置による悪影響

スラッジは、放置すると様々な悪影響を及ぼします。

・機械の故障:
スラッジが機械の内部に溜まると、ノズルやポンプを詰まらせ、機械の故障の原因となります。
・加工品質の低下:
スラッジが加工液中に混入すると、加工精度が低下し、製品の品質に悪影響を及ぼします。
・作業環境の悪化:
スラッジが作業場に散乱すると、作業環境が悪化し、作業員の安全を脅かす可能性があります。
・廃棄物処理コストの増加:
スラッジは産業廃棄物として処理されるため、処理費用がかかります。
・クーラント液の腐敗:
スラッジがクーラント液中に混入すると、クーラント液を腐敗させ、悪臭を発生させる原因となります。

3: スラッジを放置すると何が起きるのか。具体的な例

スラッジの放置によって引き起こされる問題を、具体的な例を挙げて説明します。

*例1:マシニングセンタにおけるスラッジによる故障

マシニングセンタにおいて、スラッジが内部の給油配管を詰まらせることで、切削油が不足し、切削精度が低下したり、工具が破損したりするケースがあります。

*例2:研削盤におけるスラッジによる加工品質の低下

研削盤において、研削液中にスラッジが混入することで、ワークに傷が付いたり、表面粗さが悪化したりするケースがあります。

*例3:スラッジによる作業環境の悪化

スラッジが作業場に散乱することで、作業環境が悪化し、作業員の健康を損なう可能性があります。
また、スラッジを踏むことで、滑って転倒する危険性もあります。

□スラッジ回収方法とそのメリット

1: 手作業による回収

手作業によるスラッジ回収は、最もシンプルで広く行われている方法です。
バケツやスコップなどの道具を使って、作業員が直接スラッジを回収します。
この方法の最大のメリットは、どんな種類のスラッジにも対応できる柔軟さにあります。
特に小規模な作業現場や、特殊な装置を導入する必要がない場合に非常に有効です。

しかし、一方でデメリットとしては、作業に多くの時間と手間がかかり、労働強度が高いという点があります。
特に大規模な作業になると、作業員の負担が増大し、効率が悪くなる可能性があります。
また、作業員の安全を十分に確保する必要があり、労働環境の整備が求められます。

2: 磁気セパレーター

磁気セパレーターは、磁性体を含むスラッジを回収するのに適した方法です。
強力な磁石を使って、鉄分や他の磁性物質を含んだスラッジを効率的に吸着し、回収することができます。
この方法の大きなメリットは、磁性体スラッジを短時間で効率的に回収できる点です。
また、手作業と比較して労力が少なく、作業時間も大幅に短縮できます。
そのため、作業の自動化や大規模なスラッジ処理にも適しており、労働力を大きく削減できるという利点があります。

ただし、デメリットとしては、磁性体でないスラッジは回収できないという点があります。
このため、回収対象となるスラッジが磁性体であるかを確認する必要があります。
また、磁石の強さや設置場所の選定が重要で、これが不適切だと回収効率が低下してしまうリスクもあります。

3: フィルター

フィルターを使った回収は、スラッジをろ過して分離する方法です。
スラッジの大きさや性質に合わせて適切なフィルターを使用することで、細かいスラッジも確実に回収できる点がこの方法の最大のメリットです。
また、フィルターを用いることで作業を自動化しやすく、大規模な処理現場でも効率的に運用できるという利点があります。

しかし、デメリットとして、フィルターは目詰まりを起こしやすく、定期的に交換や清掃を行う必要があります。
特に、スラッジの量が多い場合や粘度が高い場合には、フィルターの目詰まりが頻発する可能性があり、メンテナンスにかかるコストや作業時間が増大することがあります。
そのため、長期的な運用を考慮した際には、フィルターのメンテナンスや交換頻度も考慮する必要があります。

4: 沈殿槽

沈殿槽は、スラッジを液体中から分離するための方法で、比重の差を利用してスラッジを沈降させるシステムです。
この方法のメリットは、一度に大量のスラッジを処理できる点です。
特に大規模な施設や工場でのスラッジ回収に適しており、手作業と比較して労力が少なく、安定した処理が可能です。

一方で、デメリットとしては、スラッジが沈殿するまでに時間がかかるため、即座にスラッジを回収する必要がある場合には不向きです。
また、沈殿槽を設置するためには広いスペースが必要となるため、設置場所に制約がある場合や、狭い作業現場では利用が難しい場合があります。

□現場でスラッジが引き起こす問題とその対策

スラッジは、放置すると様々な問題を引き起こします。
ここでは、現場でスラッジが引き起こす問題とその対策について解説します。

1: 機械の故障

スラッジが機械の内部に溜まると、ノズルやポンプを詰まらせることがあります。
ノズルが詰まると、クーラント液が正常に供給されなくなり、加工精度が低下したり、工具が破損したりする原因となります。
ポンプが詰まると、クーラント液の循環が止まり、機械が停止してしまうこともあります。

<対策>
・定期的な清掃: 機械の内部を定期的に清掃し、スラッジを溜めないようにする。
・フィルターの設置: 機械の内部にフィルターを設置し、スラッジが機械内部に侵入するのを防ぐ。
・スラッジ回収装置の導入: スラッジ回収装置を導入し、スラッジを自動的に回収する。

2: 加工品質の低下

スラッジが加工液中に混入すると、加工精度が低下し、製品の品質に悪影響を及ぼすことがあります。
スラッジが工具に付着すると、工具の摩耗が促進され、工具寿命が短くなることもあります。
<対策>
・加工液のろ過: 加工液を定期的にろ過し、スラッジを除去する。
・スラッジ回収装置の導入: スラッジ回収装置を導入し、スラッジを自動的に回収する。
・加工液の交換: スラッジが溜まり過ぎた場合は、加工液を交換する。

3: 作業環境の悪化

スラッジが作業場に散乱すると、作業環境が悪化し、作業員の安全を脅かす可能性があります。
スラッジを踏むことで、滑って転倒する危険性もあります。
また、スラッジが空気中に舞うと、呼吸器系の疾患を引き起こす可能性があります。

<対策>
・作業場の清掃: 作業場を定期的に清掃し、スラッジを溜めないようにする。
・スラッジ回収装置の導入: スラッジ回収装置を導入し、スラッジを自動的に回収する。
・個人保護具の着用: 作業員は、マスクや手袋などの個人保護具を着用する。

4: 廃棄物処理コストの増加

スラッジは産業廃棄物として処理されるため、処理費用がかかります。
スラッジの発生量を抑えることで、廃棄物処理コストを削減することができます。

<対策>
・スラッジ回収装置の導入: スラッジ回収装置を導入し、スラッジを自動的に回収する。
・加工液の管理: 加工液を適切に管理することで、スラッジの発生量を抑える。

5: クーラント液の腐敗

スラッジがクーラント液中に混入すると、クーラント液を腐敗させ、悪臭を発生させる原因となります。
腐敗したクーラント液は、加工精度を低下させたり、工具の寿命を短くしたりする原因となります。

<対策>
・クーラント液の管理: クーラント液を定期的に検査し、腐敗していないか確認する。
・クーラント液の交換: 腐敗したクーラント液は交換する。
・スラッジ回収装置の導入: スラッジ回収装置を導入し、スラッジを自動的に回収する。

□まとめ

スラッジは、放置すると機械の故障、加工品質の低下、作業環境の悪化など、様々な問題を引き起こす可能性があります。
スラッジによるトラブルを解決するためには、適切なスラッジ回収方法を選択し、定期的な清掃や管理を行うことが重要です。
本記事では、スラッジの種類や発生源、放置することで起こる悪影響、そして具体的な対策方法について解説しました。
これらの情報を参考に、現場で発生するスラッジを適切に処理することで、より安全で効率的な製造現場を実現できるはずです。